“M” (2020)
本作は『M』という一人の架空の天文学者を追憶し、過去の写真術と天文学の関係性について思いを馳せた物語仕立ての作品である。19 世紀に写真術が発明されてから、天文学の研究分野が飛躍的に発達した背景がある。天体望遠鏡などを用いた手書きのスケッチによる従来の観測方法から一転し、写真術を応用した研究が普及し始めると、これまでよりも忠実な観測記録が残せるようになり、また複製をすることによって、あらゆる天文学者との間で写真の比較・分析が行われるなど、情報の共有が可能になったことに起因する。さらには、写真感光材料の精度が高まるにつれて、肉眼では到底見ることの出来なかった暗い天体が、写真によってその姿が次々と明らかになっていったことも挙げられる。私はリサーチを通してこうした事柄を知り得たとき、写真を用いて星を手に取るように眺めるということ、それは天文学者が⻑年思い抱いていた欲望のように思えてならなかった。この作品では、当時実際に使用されていた機材や写真乾板といった観測の痕跡、歴史背景を元にイメージを組み立て、彼がかつて観てきた天体や観測していた場所などを交えてフィクションの物語を紡いでいる。『M』が写真に残した宇宙への眼差しを通して、過去の天文学者がどのようにして星を眺めていたのかを想像してもらえたらと思う。
Installation View
M, 72 Gallery, 東京(2022)
M, 72 Gallery, Tokyo, JP(2022) 
T3 PHOTO FESTIVAL TOKYO, 東京(2021)
T3 PHOTO FESTIVAL TOKYO, Tokyo, JP(2021)
Astrograph, ギャラリー砂扇, 東京(2021)
Astrograph, Galery Saoh, Tokyo, JP(2021)
写真新世紀展2020, 東京都写真美術館, 東京(2020)
THE EXHIBITION OF NEW COSMOS OF PHOTOGRAPHY 2020, TOKYO PHOTOGRAPHIC ART MUSEUM, Tokyo, JP(2020)
境界が枠になるとき, チューリッヒ芸術大学, スイス(2020)
When Boundaries Become Frame, Zurich University of the Arts, Zurich, CH(2020)

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